地域と環境に育てられる子どもたち

 先日ホタル船に乗船しました。1艇に20人あまりの乗船客が乗っているのにも関わらず,それを感じさせないほどの静けさに包まれ,わずかばかりの川のせせらぎの音を聞きながら船は滑り出しました。
 「息をのむ」とは,まさにこのことを表す言葉ではないでしょうか。出艇後まもなく穏やかなカーブを過ぎると,目の前に壁一面のホタルの明滅が現れました。川面から目にしたそれは,山全体が音もなく揺れ動くかのような光景です。
 いくつかの瀬を越えながら,次々と現れるホタルの山は,日頃の喧噪から,身も心も遠いところへと誘ってくれました。
 時が過ぎるのも忘れ,舟は川を下り,神子橋を遠くに捉えることができるようになった頃,対岸よりあどけなさの残る子どもの歌声が聞こえてきました。「ほーっ ほーっ ほーたる来い。」そして,舟がその岸に近づく頃「こんばんは〜」「そっちのホタルもきれいですか〜」透き通る声が闇の中から響いてきます。音もなく静かに下る暗闇の舟に向かって,大きな声で挨拶をする子どもたち。そしてまもなく再び始まる歌声。心の原風景に出会うことができました。
 終点にたどり着いた舟は,多くの地域の方々に迎えられました。皆さん笑顔で「お帰んなさ〜い」と迎えてくださいます。心から感謝の気持ちがこみ上げ,乗船者の口からは自然と「ありがとうございました。」という言葉が。
 日本一のホタル船体験をさせていただきました。それはホタルはもちろんのこと,「おもてなし」と「感謝」の心がリンクする心温まる体験でした。鶴田中学校の生徒たちは,素晴らしい自然環境と,素晴らしい地域の人々に見守られ,素直に育てられたのだとしみじみ感じたひとときでした。子どもたちのこれからの順風な成長を願ってやみません。